筆者:吉田哲也
Q. 先ほど、夫が逮捕されました。商店街でけんかがあって怪我人が出たらしいのですが、その犯人が夫に似ているということで、警察から呼び出しがあり、事情を聞かれていたのですが、そのまま逮捕されてしまいました。夫は、警察署に行く前、「絶対にやっていない。」と言っていました。夫は、これからどうなるのでしょうか?
A. ご主人が否認しているにもかかわらず逮捕されたということは、被害者なり目撃者なりが、あなたのご主人が犯人だというようなことを言っているのだと思います。ご主人は逮捕されてから48時間以内に検察官に送致され、逮捕から72時間以内に勾留請求(逮捕に引き続いての身柄拘束の申し出)が行なわれ、最大20日間の勾留となります。そして、勾留期間が終わる段階において、ご主人を起訴するか、起訴しないのであれば釈放されることになります。
Q. 夫は、警察署に行くときには、たいへん不安そうな表情をしていました。私は、夫が逮捕されたと聞いて警察署に行きましたが、会わせてくれませんでした。夫は、今、留置場で心細くしていると思います。今、私にできることがありますか。
A. 弁護士に依頼すれば、弁護士がご主人に面会することができます。
また、弁護士に依頼するかどうかすぐには決められないという場合でも、とりあえず弁護士に面会に行ってもらうという制度があります。当番弁護士制度といいます。本来弁護士に仕事を依頼した場合には弁護士費用がかかるのですが、最初の面会に限ってはその日当番で待機している弁護士が無料で面会をして、ご主人の持っている権利、刑事手続きの流れ、その他のアドバイスをすることになります。ですから、当番弁護士の出動を要請することをお勧めします。電話番号は、「090-3661-3133」です。
いずれにせよ、ご主人は「身に覚えがない」と仰っていたということもありますので、できるだけ早く弁護士に面会に行ってもらうべきです。
そして、大切なことは、絶対に「嘘の自白をしない」ということです。
Q. 夫は、心配するなと言っていたので、その点は大丈夫だと思います。
A. 密室の取調室で四六時中追及された場合、よほどの強心臓を持っている人であっても、否認を貫くことは難しいと考えた方がいいでしょう。先日鹿児島の選挙違反事件で全員無罪の判決がありましたが、その事件の捜査の過程では、親族の名前を書いた紙を何度も踏ませて自白を迫るなど、江戸時代の「踏み絵」そのものが行なわれたことも明らかになりました。残念なことですが、そういうことが絶対ないとは限らないのです。
Q. それでは、すぐにでも、当番弁護士の出動を要請しようと思います。
ところで、弁護士に依頼した場合、どんな仕事をしてもらえるのでしょうか。
A. 弁護士は、刑事事件で依頼を受けた場合、職務上「弁護人」と呼ばれるようになります。弁護人の使命は、刑事手続きにあたって被疑者の権利がないがしろにされないようにし、また、被疑者の最大の利益を図ることです。具体的には、取調べ、捜査、身柄拘束に違法や不当性がないかを不断にチェックし、もしそういうことが行なわれていればそれを正し、被疑者と適宜面会して事情を聞いたり励ましたりし、さらに、もし容疑を認める場合には被害者との間の示談を進めるなどするのです。