筆者:吉田哲也
よく聞くフレーズです。
破産しか選択の余地がない人でも、その半数くらいの人は、この言葉を口にします。確かに、破産することは、誰しも嫌でしょう。気持ちは分かります。
しかし、破産は、何らかの理由で経済的に破綻したときに、いったん財産を清算して再出発を図るためのものです。破産することによって、新たな出発を切るんだ、と気持ちを切り替えた方がいいでしょう。
ところで、破産は「この世の終わり」であるかのように誤解されています。ですから、破産するかどうかに際しては、破産についての正確な知識が、どうしても必要です。
破産手続きの流れについては、ここでは詳細を記載することはしませんが、迷信の類がたくさんあるので、それをご紹介いたします。
「破産したら戸籍に記載される。」、「破産したら選挙権がなくなる。」、「破産したら会社を辞めなくてはならない。」、「破産したら口座を作れなくなる。」、「破産したら車を買えなくなる。」、「破産したら向こう三軒両隣の知るところとなる。」これらは全部ウソです。
「破産しても戸籍に記載されるはずがありません。」、「破産しても選挙権はあります。それどころか、破産して国会議員をやっている人もいます。」、「破産 したという理由でその人を解雇することはできません(ただし、破産が法律上の資格制限になる場合は別です。)。」、「破産しても口座を作るのは自由です。 銀行は、口座利用者にお金を預けてもらって運用して利益を上げるわけですから、破産者の口座開設を断る理由がないのです(ただし、破産したときの債権者で あった銀行の場合は別です。)。」、「破産しても車を買うことは自由です(ただし、ローンは組ませてもらえないかもしれません。)。」、「破産しても、自 分から言わない限り、ご近所にばれることは普通はありません。」
21世紀に入って、毎年平均20万人の人が破産するようになりました。バブル崩 壊後90年代から通算すれば、この20年で200万人くらいの人が自己破産を経験したことになります。日本の人口が1億2000万人ですから、100人に 一人か二人は、この20年の間に自己破産を経験した計算です。20年以上昔に自己破産した人も入れると、数字はもっと上がります。
つまり、あなたのご近所さん、友人、職場の同僚のなかには、やはり自己破産を経験したことのある人がいるということです。たいへんな数字です。地域経済は大不況から脱していません。これからも自己破産者は出続けるでしょう。
破産が、あなただけに起こっている「特別なこと」ではないということ。そのことを知れば、少しは気が楽になりませんか。